基礎編 単元03データから係数を求める
基礎編 単元03
単元02では,説明用に置いた係数で選択確率を計算しました.ここでは,実際に選ばれた手段に与える確率が係数によって変わることを使い,記録全体を最もよく説明する係数を求めます.
この単元で求めるもの
単元02では,βt=−0.08,βp=−0.004 を説明用に置いて,三つの手段の確率を計算しました.実際の分析では,この係数を選択の記録から求めます.選択データから係数を求めることを,推定と呼びます.
手がかりは,係数を変えると,実際に選ばれた手段に与える確率も変わることです.記録された選択に高い確率を与える係数ほど,記録をよく説明していると考えます.
係数を決める
βt,βp
確率を計算する
ロジットモデル
記録と比べる
実際に選ばれた手段の確率
V=βtt+βpp の係数を変えると,三つのVが変わり,確率も変わります.
選択の記録から考える
まず,係数を求める手順を,所要時間だけを使うモデルで確認します.効用のうち,所要時間から表す部分Vを,次の式で計算します.
求める係数は,所要時間が選択にどう関わるかを表すβの一つです.
下の表には,5人それぞれについて,各手段の所要時間と,実際に選んだ手段が記録されています.各手段の選択確率を計算するには,三つすべてのVが必要になるため,選ばれなかった手段の時間も使います.
| 人 | 鉄道(分) | バス(分) | 自転車(分) | 選んだ手段 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 10 | 15 | 15 | 鉄道 |
| 2 | 15 | 15 | 15 | 自転車 |
| 3 | 20 | 15 | 20 | バス |
| 4 | 10 | 5 | 20 | 鉄道 |
| 5 | 15 | 10 | 10 | バス |
この記録を使って,どのようにβを求めるのかを見ていきます.
係数を変えてみる
係数βを動かし,5人それぞれが実際に選んだ手段の確率Pがどう変わるかを見てください.
変わったところ
| 人 | 鉄道 | バス | 自転車 | 選んだ手段 | P |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 10 | 15 | 15 | 鉄道 | − |
| 2 | 15 | 15 | 15 | 自転車 | − |
| 3 | 20 | 15 | 20 | バス | − |
| 4 | 10 | 5 | 20 | 鉄道 | − |
| 5 | 15 | 10 | 10 | バス | − |
記録全体の起こりやすさ
一人ひとりの選択は独立と仮定し,5人が実際に選んだ手段の確率Pを掛け合わせます.この値を尤度(ゆうど)と呼びます.
尤度は,記録全体が,その係数のもとでどれだけ起こりやすいかを表します.尤度が大きい係数ほど,記録をよく説明していると考えます.
例:β=−0.10 のとき,尤度 = 0.452 × 0.333 × 0.452 × 0.331 × 0.384 = 0.0087
掛ける数が増えるほど尤度はとても小さくなります.そのため,次の画面では対数をとって扱います.
最尤推定
確率の積はとても小さくなるため,対数をとった対数尤度を使います.対数尤度が最大になる β=−0.28 を推定値とする方法が最尤推定です.5人に共通の一つの係数で,記録全体の対数尤度を最大にします.
読み取れること
まとめ
係数を変えると,実際に選ばれた手段の確率が変わります.一人ひとりの確率を掛けた尤度(対数をとった対数尤度)が最大になる共通の係数が,推定値です.
参考:Train, K. E. (2009) Ch.3.岩倉成志『交通計画』講義資料 第6回(5人の例題).