基礎編 単元04演習:旅行先の選択を推定する

基礎編 単元04

自分で効用関数を書いて,
推定する.

単元03では,選択の記録から係数を求める考え方を学びました.この演習では,旅行先を選んだ300人の記録を使い,自分で効用関数を書いて推定します.項を一つずつ加えながら,当てはまりの変化と係数の読み方を確かめます.

目安
約25分
操作
6つ

演習の進め方

旅行者は,四つの観光地から一つを選びます.

旅行先を選んだ300人の記録から,効用関数を書いて係数を推定します.

旅行者が,箱根・日光・河口湖・伊豆高原の四つの観光地を比べて,行き先を一つ選ぶ様子のイラスト

演習用に作成した架空データです.

演習の進め方

段階ごとに,式に項を一つずつ加えます.

段階2時間+費用

V = βtT + βcC

係数は四つの目的地で共通

段階3+訪問経験

V = βtT + βcC + βRR

ダミー変数(あり=1,なし=0)

段階4+目的地の定数

V = α + βtT + βcC + βRR

四つのうち基準の一つを0にする

段階5+自然観光重視

V = α + βtT + βcC + βRR + γN

γは目的地別.基準の一つを0にする

下線の項が,その段階で加える項です.各段階で推定し,対数尤度と調整済み尤度比ρ̄2がどう変わるかを比べます.

演習1記録を見る2時間+費用3+訪問経験4+目的地の定数5+自然観光重視

300人の旅行先の記録を見てみましょう.

東京から1泊2日の旅行を計画する人が,四つの候補から旅行先を選びました.各候補の時間・費用と,選んだ旅行先を確認します.

演習1記録を見る2時間+費用3+訪問経験4+目的地の定数5+自然観光重視

時間と費用から,四つの効用関数を書きます.

まずは所要時間と旅行費用を使います.時間の係数βtと費用の係数βcは,四つの目的地で共通です.

T
片道所要時間(時間).例:90分=1.5時間
C
旅行費用(万円)=往復交通費+1泊宿泊費.例:28,000円=2.8万円

補足

入力の例:bt*T + bc*C.btはβt,bcはβcです.TとCは,その目的地の行の値を表します.項の順序と空白は自由です.

自由パラメータ —

演習1記録を見る2時間+費用3+訪問経験4+目的地の定数5+自然観光重視

行ったことがある場所は,選ばれやすいでしょうか.

同じ時間や費用でも,以前に訪れたことがあるかどうかが選択に関わるかもしれません.訪問経験を加えます.

R
訪問経験(訪れたことがある=1,ない=0).人と目的地の組み合わせごとに値が違う
T,C
時間(時間),費用(万円)

「あり/なし」のうち,式に入れるのは「あり」のRだけです.「なし」は抜いた基準になります.

補足

前の段階の式に bR*R を加えます(bRはβR).

自由パラメータ —

演習1記録を見る2時間+費用3+訪問経験4+目的地の定数5+自然観光重視

時間・費用・訪問経験だけでは表せない,目的地ごとの差を加えます.

時間・費用・訪問経験だけでは表せない目的地ごとの平均的な違いを,定数α(選択肢固有定数)で表します.

四つの効用に同じ数を足しても,目的地間の差と選択確率は変わりません.そこで,一つの定数を0に決め,残りをその目的地との差として推定します.

補足

定数は a1(箱根),a2(日光),a3(河口湖),a4(伊豆高原)です.基準の目的地の定数は書きません.

自由パラメータ —

演習1記録を見る2時間+費用3+訪問経験4+目的地の定数5+自然観光重視

自然観光を重視する人は,どこを選びやすいでしょうか.

自然の景色を楽しむことを重視する人はN=1,それ以外はN=0です.この値は,同じ人の四つの行で共通です.

Nには目的地ごとの係数γを付けます.四つのγに同じ数を足しても確率は変わらないため,定数αと同じく,基準の河口湖のγを0に固定し,残りは基準との差として推定します.

補足

g1(箱根),g2(日光),g3(河口湖),g4(伊豆高原)を使い,g1*N のように書きます.基準の目的地には付けません.

自由パラメータ —

演習1記録を見る2時間+費用3+訪問経験4+目的地の定数5+自然観光重視✓振り返り

自分で書いた式と,推定した結果を読み返します.

まとめ

自分で書いた効用関数を,記録から推定しました.

300人の旅行先の記録で,自分で効用関数を書き,その式のとおりに係数を推定しました.項を加えるたびに,対数尤度と調整済み尤度比で当てはまりを比べました.

共通の係数,ダミー変数(一つの区分を抜いて基準にする),目的地ごとの定数(一つを0にする),個人属性に目的地別の係数を付ける理由を,式とデータの列の対応で確かめました.

次の学習

人によって時間を重視する程度が違う場合や,推定結果の点検・施策の比較は,発展編・実践編で扱う予定です(随時追加予定).

参考:Train, K. E. (2009) Ch.2 §2.5, Ch.3.300人の旅行先選択は演習用の架空データです.