基礎編 単元01行動モデルで政策を考える

基礎編 単元01

政策の結果を,
人の選択から考える.

新しい鉄道路線の開業,通勤時間の短縮,渋滞情報の提供.こうした政策の結果を見込むには,人々の選び方がどう変わるかを知る必要があります.この単元では,人の選択を数式で表す「行動モデル」の考え方と,それが選択に関わる要因の解釈や,政策の効果の予測にどう役立つのかを学びます.

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約8分
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1つ

行動モデルで考える問い

その政策で,人々の選択はどう変わるでしょうか.

政策の効果は,政策を実施する場合としない場合で,人々の選択がどう変わるかを比べて考えます.次の三つの例で考えてみましょう.

  • 新線が開業したら,利用者は増えるのか.

    関わる選択

    交通機関の選択

    どの交通機関を利用するか

  • 通勤時間が短くなったら,女性の家事時間は減るのか.

    関わる選択

    時間配分の選択

    家事・仕事・余暇に何時間使うか

  • 渋滞情報を出発前に伝えたら,渋滞は減るのか.

    関わる選択

    出発時刻の選択

    何時に家を出るか

新線開業の例

新線を利用する人は,
どのくらいいるのでしょうか.

沿線の住宅地から都心へ,自動車やバスで通勤している人々を考えます.新しい鉄道が開業すると,通勤に新線を利用することもできます.

通勤時間の短さを重視する人もいれば,費用の安さを重視する人もいます.新線の利用者数を見積もるには,ほかの交通機関と比べて,新線を選ぶ人がどれくらいいるかを考える必要があります.

  1. 1通勤手段の時間・費用を比べる

    • 自動車
    • バス
    • 新線
  2. 2人々の選択を予測するここが行動モデル

    時間・費用→数式→どの交通機関を選ぶか

    時間や費用と選択の関係を表す係数は,実際の選択データから求めます.

  3. 3新線の利用者数を見積もる数値は説明用

    • 0.7
    • 0.2
    • 0.5
    • 0.1
    • 0.6

    新線の予測利用者数2.1人5人の利用確率の合計

    一人ひとりが新線を利用する確率を合計して,新線の利用者数を予測します.

開業前の記録から,開業後を予測する

現在の交通機関の選択をモデル化し,
新線開業後の利用者数を予測します.

まず,現在の通勤で選ばれている交通機関を記録します.その記録と各交通機関の所要時間・費用を使い,時間や費用が選択にどう関わるかを数式で表します(モデル化).式に入れる係数は,選択データから推定します.

次に,その数式に新線の所要時間や運賃を加えます.新線がある場合に各交通機関がどれくらい選ばれるかを計算し,利用者数を予測します.

  1. 現在の記録自動車・バスの時間・費用と,選ばれた交通機関
  2. モデル化と推定時間・費用と選択の関係を式で表し,係数を推定
  3. 新線ありを予測同じ関係に,新線の時間・運賃を加える

現在の利用者数(1,000人中)

自動車
バス
新線

学ぶ順序

この流れを,次の二つの単元で組み立てます.

新線の利用者数を予測するには,時間や費用から各交通機関が選ばれる確率を表す式と,その式に入れる係数が必要です.

係数は選択データから推定します.推定した係数の符号や大きさからは,時間や費用が選択にどう関わるかを解釈することもできます.

これから学ぶこと単元
時間や費用から,各手段が選ばれる確率をどう表すか02 効用からロジットモデルへ
選択の記録から,式に入れる係数をどう求め,その意味を読み取るか03 データから係数を求める

まとめ

政策の問いに答えるために,人の選択を計算します.

新線の利用者数,短くなった通勤時間の使い道,渋滞情報を受けた後の出発時刻.どの問いも,人がどう選ぶかを計算しないと答えられません.

この単元では,新線開業の例で,現在の交通機関の選択をモデル化し,新線開業後の利用者数を予測する流れを見ました.行動モデルは予測だけでなく,推定した係数から,時間や費用が選択にどう関わるかを解釈するためにも使います.

次への問い

時間や費用から,それぞれの手段が選ばれる確率を,どのような式で計算するのでしょうか.

参考:McFadden, D. (2001) Economic Choices, American Economic Review, 91(3).国土交通省(2012年改訂版,2025年3月一部変更)鉄道プロジェクトの評価手法マニュアル.Kitamura, R., Fujii, S., Pas, E. I. (1997) Transport Policy, 4(4).Pabilonia, S. W., Vernon, V. (2022) Review of Economics of the Household, 20(3).Arnott, R., de Palma, A., Lindsey, R. (1991) Transportation Research Part A, 25.