補講選択データの形式
補講
係数を推定するときは,観測された選択と,そのとき選べた候補の条件を使います.通学手段の記録を例に,この情報を表へ整理する方法を確認します.
一回の選択の記録
Aさんが鉄道を選んだとき,バスと自転車も選べたとします.この選択結果と,三つの手段の時間・費用を,同じ選択機会の情報としてまとめます.
同じ人の別の日の選択は,別の選択機会として区別します.
| 候補 | 所要時間 | 費用 | 選んだ |
|---|---|---|---|
| 鉄道 | 25分 | 350円 | ○ |
| バス | 35分 | 180円 | |
| 自転車 | 50分 | 0円 |
利用可能性
Bさんが自転車を利用できない場合,自転車はその回の比較対象から外します.ここでは,自転車の借用やシェアサイクルは利用できないとします.
表に自転車の行を残す場合は,available=0と記録します.確率計算では,その候補を分母の合計に含めません.
| 候補 | 所要時間 | 費用 | available | chosen |
|---|---|---|---|---|
| 鉄道 | 25分 | 350円 | 1 | 0 |
| バス | 35分 | 180円 | 1 | 1 |
| 自転車 | 50分 | 0円 | 0 | 0 |
条件の定義
所要時間は徒歩や待ち時間を含む,自宅から大学までの時間とします.費用は,その1回の通学で追加的に支払う金額です.
このような選択肢の特徴を属性と呼びます.全員について同じ定義と単位を使い,定期券などの扱いもそろえます.
表の形
横長の表は,一回の選択を1行にし,候補ごとの条件を列に並べます.縦長の表は,一回の選択の中で候補ごとに1行を使います.
どちらにも同じ情報を記録できます.使用するソフトや計算方法に合わせて形式を選びます.人のIDと選択機会のIDは,それぞれ区別して持たせます.
| choice_id | 鉄道の時間・費用 | バスの時間・費用 | 自転車の時間・費用 | 選択 |
|---|---|---|---|---|
| A-1 | 25分・350円 | 35分・180円 | 50分・0円 | 鉄道 |
| choice_id | alternative | time_min | cost_yen | chosen |
|---|---|---|---|---|
| A-1 | rail | 25 | 350 | 1 |
| A-1 | bus | 35 | 180 | 0 |
| A-1 | bicycle | 50 | 0 | 0 |
選ばれなかった候補
MNLの選択確率は,選ばれた候補の効用と,利用可能な全候補の効用を使って計算します.そのため,鉄道を選んだ記録でも,バスや自転車の条件が必要です.
この表から時間と費用の係数を推定するときは,選択結果と,各候補の条件をそろえます.
鉄道の選択確率 = exp(V鉄道) ÷ exp(V鉄道)+exp(Vバス)+exp(V自転車)
分母には,バスと自転車のVが入ります.Vは各候補の時間と費用から計算するため,選ばれなかった候補の条件も記録しておきます.
300人の架空データ
このサイトでは,条件の異なる300人の架空の通学記録を使います.person_idは人,choice_idは選択機会,alternativeは候補を識別します.
時間・費用,利用可能性,選択結果を,候補ごとの行に対応付けます.
| 列名 | 内容 |
|---|---|
| person_id | 人の番号(1〜300) |
| choice_id | 選択機会の番号(この例では一人一回) |
| area | 地域(3種類) |
| alternative | 候補(rail・bus・bicycle) |
| time_min / cost_yen | 所要時間(分)と費用(円) |
| available | 利用できれば1,できなければ0 |
| chosen | 選んだ候補なら1 |
記録の点検
一回の選択で選んだ候補が一つあり,その候補が利用可能になっているかを確認します.候補の重複や,必要な時間・費用の欠損も点検します.
値が選択時点で比較できた条件を表しているか,時間や費用の単位がそろっているかも確かめます.
推定結果の点検は,単元13でまとめて扱います.
まとめ
一回の選択を識別し,選べた候補の時間・費用と選択結果を記録します.利用できなかった候補は,確率の計算から除きます.
推定する前に,ID,利用可能性,選択フラグ,条件の欠損や単位を確認します.