補講選択データの形式

補講

選択の記録を,
分析用のデータに整える.

係数を推定するときは,観測された選択と,そのとき選べた候補の条件を使います.通学手段の記録を例に,この情報を表へ整理する方法を確認します.

目安
約10分
操作
なし

一回の選択の記録

一回の選択と,候補ごとの条件を対応付けます.

Aさんが鉄道を選んだとき,バスと自転車も選べたとします.この選択結果と,三つの手段の時間・費用を,同じ選択機会の情報としてまとめます.

同じ人の別の日の選択は,別の選択機会として区別します.

Aさんの一回の通学
候補所要時間費用選んだ
鉄道25分350円○
バス35分180円
自転車50分0円

利用可能性

その場面で利用できた候補を区別します.

Bさんが自転車を利用できない場合,自転車はその回の比較対象から外します.ここでは,自転車の借用やシェアサイクルは利用できないとします.

表に自転車の行を残す場合は,available=0と記録します.確率計算では,その候補を分母の合計に含めません.

Bさんの一回の通学
候補所要時間費用availablechosen
鉄道25分350円10
バス35分180円11
自転車50分0円00

条件の定義

時間と費用の測り方をそろえます.

所要時間は徒歩や待ち時間を含む,自宅から大学までの時間とします.費用は,その1回の通学で追加的に支払う金額です.

このような選択肢の特徴を属性と呼びます.全員について同じ定義と単位を使い,定期券などの扱いもそろえます.

所要時間(分)
徒歩や待ち時間を含む,自宅から大学までの時間.
費用(円)
その1回の通学で追加的に支払う金額.
定期券など
全員で同じ扱いを決めておく.例:定期券を持つ人の追加費用を0円とするか.

表の形

同じ選択記録を,横長と縦長の表で表せます.

横長の表は,一回の選択を1行にし,候補ごとの条件を列に並べます.縦長の表は,一回の選択の中で候補ごとに1行を使います.

どちらにも同じ情報を記録できます.使用するソフトや計算方法に合わせて形式を選びます.人のIDと選択機会のIDは,それぞれ区別して持たせます.

横長の表
choice_id鉄道の時間・費用バスの時間・費用自転車の時間・費用選択
A-125分・350円35分・180円50分・0円鉄道
縦長の表
choice_idalternativetime_mincost_yenchosen
A-1rail253501
A-1bus351800
A-1bicycle5000

選ばれなかった候補

選ばれなかった候補の条件も,確率の計算に使います.

MNLの選択確率は,選ばれた候補の効用と,利用可能な全候補の効用を使って計算します.そのため,鉄道を選んだ記録でも,バスや自転車の条件が必要です.

この表から時間と費用の係数を推定するときは,選択結果と,各候補の条件をそろえます.

鉄道の選択確率 = exp(V鉄道) ÷ exp(V鉄道)+exp(Vバス)+exp(V自転車)

分母には,バスと自転車のVが入ります.Vは各候補の時間と費用から計算するため,選ばれなかった候補の条件も記録しておきます.

300人の架空データ

条件の異なる人の記録を,同じ形式で集めます.

このサイトでは,条件の異なる300人の架空の通学記録を使います.person_idは人,choice_idは選択機会,alternativeは候補を識別します.

時間・費用,利用可能性,選択結果を,候補ごとの行に対応付けます.

列名内容
person_id人の番号(1〜300)
choice_id選択機会の番号(この例では一人一回)
area地域(3種類)
alternative候補(rail・bus・bicycle)
time_min / cost_yen所要時間(分)と費用(円)
available利用できれば1,できなければ0
chosen選んだ候補なら1
架空データ(CSV)を保存する

記録の点検

記録の対応と値を,推定前に点検します.

一回の選択で選んだ候補が一つあり,その候補が利用可能になっているかを確認します.候補の重複や,必要な時間・費用の欠損も点検します.

値が選択時点で比較できた条件を表しているか,時間や費用の単位がそろっているかも確かめます.

  1. 選択機会ごとに,chosen=1の行がちょうど一つある.
  2. chosen=1の候補が,available=1になっている.
  3. 同じ選択機会の中で,候補が重複していない.
  4. 利用可能な候補の時間・費用が欠けていない.
  5. 時間は分,費用は円など,単位と定義がそろっている.

推定結果の点検は,単元13でまとめて扱います.

まとめ

選択結果と,各候補の条件を対応付けて記録します.

一回の選択を識別し,選べた候補の時間・費用と選択結果を記録します.利用できなかった候補は,確率の計算から除きます.

推定する前に,ID,利用可能性,選択フラグ,条件の欠損や単位を確認します.

この補講の使い方

最尤推定や分析の実装で,記録の形を確かめるときに参照してください.